雑  感
1999年7〜8月


久々の更新ですが(^_^;)(_ _)、まず、ラトルに明け暮れた感のある6月を、少々振りかえってみたいと思います。

ラトルはこの6月に、2〜4日(ハイドン:交響曲70番、90番、モーツァルト:コンサートアリア他)と8〜10日(マーラー7番他)と、2つのプログラムでBPOの定期演奏会に出演した訳ですが、 このプログラム自体は、既に2年前から決定していたようです。 97年6月24〜26日、ハイドンの「天地創造」を演奏した際に、今回のプログラムは決まったとのこと。 今回、モーツァルトのコンサートアリアを歌ったクヴァストホフが「天地創造」にも出演していたようなので、たぶんそうなのでしょう。 いずれにせよ、後任人事決定の直前のこの時期に、タイミングよく定期演奏会に登場して、実力を発揮したことが、最大の勝因という気もします。 マーラーの7番は、Berliner Zeitung の初日の批評によると、第1楽章の再現部の前のシンバルがフライングしたりとか、第2楽章に棒の乱れがあったりもしたようですが、守りではなく、攻めの姿勢の演奏を目指したからかもしれませんね。 結局のところ、このマーラーの成功が大きかったのでしょう。 某放送局も定期演奏会の放映打ち切りなどせずに、この大事な演奏会もちゃんと放送してくれれば、 大変に有り難かったのですが......

さて、その後の6月14日の予備投票で、ラトルはかなりの票を集めたようですが、この時点でも、ラトルとバレンボイムに絞られていたとはいえ、ヤンソンスとメッツマッハーの名前もまだ消えてはいなかったようです(一応、候補は多めにということなのでしょう)。 そのせいか、6月14〜16日のメッツマッハーの演奏会(ベートーヴェンとハルトマンの第7交響曲)、おそらく最終日だと思うのですが、 Tagesspiegel の記事によると、ベートーヴェンの第7交響曲の演奏が完全に鳴り終わらないうちに、ブーを叫んだ人がいたのだとか。 メッツマッハーが後任人事の名前に残っていたことが気に入らなかったのでしょうが、 これだけは、唯一残念な出来事という気がします。 なお、このブーイングの日には、たまたま 6月20〜22日の演奏会でプロコフィエフの第5交響曲などを振ることになっていたレヴァインも客席で聞いていたようです。 レヴァインは、このあと、6月26〜27日と、ヴァルトビューネでリヒャルトの夕べ(シュトラウスとワーグナー)を指揮し、ドイツでは27日の模様が生中継されたのですが、今年は日本では、ヨーロッパコンサートに引き続き、この夏の風物詩まで放送されなくなったのは、残念の極みです。 「トリスタン」の前奏曲など、さすがに野外で聞くには、ちょっとつらいものもあったようですが、全体としては、今年も盛り上がったようです。

何はともあれ、日本にいても、ベルリンの新聞のページから、こうした情報がわかるようになって、有り難い時代だなと思います。

( 7月30日)

本日は、録画情報のコーナーを更新しました。この春以降、BPOの演奏会は、5月のヨーロッパコンサート、6月の野外コンサート、7月のカラヤン追悼コンサートと生中継されたのですが、日本では、5月と6月のがまったく黙殺されたのは周知の通り。 Klassikopenのページで、この3つの演奏会の内容が紹介されておりますので、ここにリンクする形で整理してみました。
( 8月 2日)

恒例の夏のBPOシリーズの放送、例年そんなに熱心に全部聞いたりしている訳ではないのですが(_ _)(^_^;)、今年は面白そうなので、頑張って聞こうかと思っています。 とりあえず、月曜と火曜のシェーンベルクが、BPOの実力発揮という感じで、なかなかよかったのではないでしょうか。 月曜は、自宅のラジカセでの鑑賞という悪条件の下、じっくり聞いたのはシェーンベルクの「管弦楽のための変奏曲」だけでしたが、なかなかよく聞かせる演奏に仕上がっていたように思いました。 ちなみに、このメータのプログラムは、BPOにより初演された曲というチクルスの一環だったはずです(このシェーンベルクの曲はフルトヴェングラー/BPOにより初演)。

火曜は、シェーンベルクの「ペレアスとメリザンド」。 これは、シェーンベルク全集の第50巻目として出版された「ペレアス」の新校訂譜による演奏。 演奏初日の2月17日のお昼、この記念すべき50巻目の出版プレゼンテーションがあり(フィルハーモニーのフォアイエで)、アバドがこの新校訂譜を贈呈されたという話は、2月に掲示板にも書いた通り。 昨シーズンの”愛と死”チクルスで、ワーグナーの「トリスタン」に次いで重要なプログラムだったのではと思います。 その意味でも、放送には期待していたのですが、まあ、BPOの実力を十分に堪能させてくれる演奏という点では、なかなかよかったのではないでしょうか。 絹のような弦楽器の響きに、木管楽器の名人芸が繰り広げられ、それだけでも聞き惚れる感じ。 全体としては、「トリスタン」と同様、透明で明晰な演奏を目指していたのでしょうが、それなりに成功していたのではないかと思います。 まあ、BPOがこういう後期ロマン派の延長上にある素晴らしい曲を演奏して、それで楽しめなかったら、どうしようもないと思うのですが(^_^)。 曲が終わってから、拍手までの時間がかなりあったのもよかったですね。 なお、この曲では、通常の第1ヴァイオリンの席にビオラが座り、第1ヴァイオリンがステージ中央の右寄りで演奏するなど、これも「トリスタン」と同様に弦楽器の配置が変更されたようです。そう思って聞くと、確かに第1ヴァイオリンの音は、中央やや右、ビオラは左側、チェロは中央やや左から聞こえてくる感じがしましたが、如何でしょうか?

さて、最後に演奏されたベルリオーズの珍しい作品、後半の「ハムレットの終幕のための葬送行進曲」には、短い曲ながらびっくりしました。 まさか、こんなに太鼓が活躍する曲だとは知らなかったので(^_^;)。 ティンパニの他に、軍楽隊の太鼓が派手な活躍。 後年のベルリオーズの「葬送と凱旋の交響曲」をも思い起こさせるような。 なお、こちらは1月の演奏ですが、1月下旬の掲示板のログで確認したところ、サヴァリッシュが「家庭交響曲」などを振る予定だった演奏会をキャンセルし(奥さんの死去のため)、その代役でアバドが登場した演奏会。 ちなみに、アバドは、昨秋のアメリカ・日本演奏旅行の直前の9月29日〜10月1日の”愛と死”チクルスの最初の演奏会をキャンセル。 この時は、代役も立たず、演奏会自体が中止になったという珍しいケースでしたが、本来はここでベルリオーズのこの初期の作品も演奏されるはずだったのでした。 秋に予定されていたプログラムが、1月に演奏されることになり、この時のプログラムは、ベルリオーズ「トリスティア」から、プロコフィエフ:Vn協1、ドビュッシー「夜想曲」、ラヴェル「ラ・ヴァルス」。 プロコフィエフの協奏曲のソリストは、若いハーグナーという女性奏者で、この曲はこの春のイースター音楽祭の公開プローベでも再演。 ということで、この1月のプログラムのベルリオーズ以外の曲目も、アバドの得意の曲だけに、放送してもらえると有り難いのですがね。

さて、水曜は、ザンデルリンクのショスタコ15番。これは春のイースターでも演奏されたプログラムなので、その点でも楽しみです。 前半のシューマンの協奏曲、ザルツブルクでのピアノはルプーで、予想に反して極めて雑な印象を与える演奏だったこともあり、今回のブレンデルの方がいいのではと思います。 後半のショスタコ15番については、また後日。 個人的には、同じザンデルリンクの指揮でも、97年春にコンセルトヘボウの定期演奏会で聞いた時の方がよかったかなぁという感想も持ったりしたのですが、また放送で聞き直してみたいと思います。 いずれにせよ、最終楽章の弦楽器は実に絶品でしたので、お聞き逃しのないように(^_^)。

( 8月11日)

水曜のBPOシリーズは、ザンデルリンクのショスタコ15番。 非常に水準の高い演奏であることは言うまでもないのですが、やはり、ショスタコーヴィチの交響曲の演奏としてはどうなんでしょう、という印象も受けました。 特に前半は、オケの全強奏にしても、ただ鳴ってるだけというか。 まあ、文句なくよかったのは、やはり第4楽章でしょうか。 あの弱音の弦の美しさは、ザルツブルクの演奏でも、まさに圧巻でした。 たぶん、この曲の演奏で、最終楽章のテンポが一番遅いのはザンデルリンクではないかと思っているのですが、そのためか、ワーグナーのモティーフの引用も、他の指揮者の演奏に比べ、よりワーグナー的に重厚に鳴っているような気がします。 なお、ザルツブルクでの演奏の布陣は、コンマスが安永さん、 木管のトップは、フルートがブラウ、オーボエがマイアー、クラが若いエキストラ、ファゴットがダミアーノ、 金管のトップは、ホルンがドーア、トランペットがクレッツァー、トロンボーンがアルントでした。 打楽器はティンパニのヴェルツェルの他に7名の奏者。 4人の正規メンバー(ミュラー、シュルツ、シンドルベック、シュリヒテ)の他、既に退団したレンベンスが気合いの入った大太鼓で活躍。 エキストラがあと2名いて、うち一人が女性で、冒頭から出てくるグロッケン(鉄琴)を担当していて、なかなかよかったです。 シンドルベックがスネアで、最後の方のお馴染みのリズムはカスタネットも一緒に叩いていました。 あとシュルツが木琴とヴィブラフォンを担当し、終演後は、周囲からねぎらいを受けていたような。 というように、個々の奏者は、どのパートもよかったと思います。

ただ、ザンデルリンクのショスタコ15番というと、97年の春にコンセルトヘボウで2度聞いているのです。 あのホールだと、チェレスタやヴィブラフォンのようなこの曲に出てくる特殊楽器の響きも実に効果的に素晴らしく響いたことや、 オケとしても、コンセルトヘボウのショスタコーヴィチの交響曲との相性のよさに感銘を受けたことなどが強く印象に残っています。 ザンデルリンクもBPOとでは大変だなあぁという気もしたのですが、私もまだショスタコの演奏に詳しい訳ではないので、これからいろいろ考えていく上での材料にしたいと思っています。

木曜に放送されるマゼールの4月中旬の演奏は、気管支炎でキャンセルしたジンマンの代役での演奏会でのもののようです。 伝統的な路線での「英雄」の演奏になるのかどうか、楽しみではあります。

( 8月12日)

今週のBPOシリーズ、個人的には、シェーンベルク、ショスタコーヴィチ、そして最終日のストラヴィンスキーが、期待通りに楽しめたといったところでしょうか。 金曜のサロネン、ラトルとバレンボイム以外では、ヤンソンスとともに後任候補として名前が残っただけあって、なかなか生彩のある素晴らしい「火の鳥」だと思いました。 打楽器も迫力満点で、こういう演奏はぜひ実演で聞いてみたいもの。

木曜のマゼール、「英雄」はおそらく弦楽器は通常の編成(ファースト 16人 〜 コントラバス 8人)で演奏していたのだと思いますが、最近のBPOの「英雄」は、アバドがファースト14人、アーノンクールがファースト12人というように、少な目の編成での演奏が続いていただけに、久々のフル編成での「英雄」といったところでしょうか。 演奏側も聞く側も、それなりに楽しめたようには思います。 あとは、第1楽章と第2楽章で、ティンパニのパートのかなりの個所を、コントラバスと同じ音に改変して演奏していたのが面白かったかなといった感じ。

さて、実は現在、仙台に帰省中で、昨日は久々にタワーレコード(仙台店)に出かけました。 DGの新しいセット物(Collectors Edition)で、ベートーヴェン(カラヤン/BPO 61〜62年盤)とドヴォルザーク(クーベリック/BPO)の交響曲全集が、それぞれ、4,790円 と 5,790円 で売られていたので、即購入しました。 ドヴォルザークは、前から欲しかったものの、安くなってから買おうと考えていたので、今回の発売は大歓迎。 早速、昨晩から、これまでほとんど聞いたことのない初期の交響曲を聞いているのですが、結構、金管楽器やティンパニも活躍しているようですね。 そのため、明らかにフォーグラーと思われる冴えたティンパニの音も随所で聞けるので、大いに満足です(^_^)。 また、「200CD オーケストラの秘密」(立風書房)という本も、昨日購入したのですが、このフォーグラーのお弟子さんでもある近藤さん(新日フィルのティンパニ奏者)の文章を中心に、BPOの演奏に関する話題もあれこれ書かれていて、これまた楽しむことができました。 この本、なかなか評判もいいようですが、楽器及び演奏者の視点から興味深いことがいろいろ述べられている点で、私も高く評価できると思います。 なお、現在、BSが受信できない環境にあり、今晩のBPOの第九の放送などは、しばらく見ることができないのが残念です。

( 8月14日)

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